10月中旬頃に畑やプランター(コンテナ)、鉢に定植したイチゴの苗は、寒さが厳しさを増す11月中旬まで生育を続け、やがて春の訪れる時期まで休眠して越冬します。
イチゴの作型(栽培法)には、イチゴ苗をビニールハウスや温室などで保温して、休眠させずに冬季に収穫を目指す促成栽培という方法もありますが、このページでは、翌年の春の開花を待って人工授粉を行い果実を収穫する作型に沿った冬越しの準備と追肥を中心とした11月のイチゴ栽培の作業のコツとポイントについてご紹介しています。
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10月中旬頃に定植したイチゴ苗は低温、短日を感じ取ると花芽を作り始めます。こうした花芽を形成する生育過程を花芽分化(かがぶんか・はなめぶんか)といいます。
花芽分化とは、発芽した植物が葉や茎を生長させ、やがて花となる芽を形成する成長過程のことで、その植物の栄養状態や気温、日照時間によってタイミングが決まります。
一季なりイチゴは、冬の低温条件と短日条件のもとで花芽分化し、翌年の春に開花結実します。(四季なりイチゴは、真夏の高温時と真冬の低温時を除いて通年花芽分化します)
育てる地域によっても多少違いがありますが、イチゴは、11月中旬ころまで生育が続いて葉を展開し、その後さらに日長が短くなり気温が下がると新しく出てくる葉が小さくなっていきます。
そして地面を覆うような姿(ロゼット)になり、その後休眠期(越冬期)に入ります。
11月のイチゴ栽培では、翌年の開花結実に向けた冬越し準備と1回目の追肥が作業の重要なポイントになります。
イチゴはほかの植物に比べて比較的寒さに強いこともあり、10月中旬に植え付けをしたイチゴ苗は、寒さが一段と厳しくなる11月頃まで、若い芽や葉を伸ばしながらゆるやかに生長を続けます。
とはいうものの、畑やプランター(コンテナ)、鉢に植えつける際に誤って深植えにしすぎたり、もともと根が傷んでいたり、植え付けの際に根を傷めたりした苗では、生育が止まってしまったり、思わしくないものも出てきます。
もちろん植えつけ前、植え付け後に病気にかかったイチゴ苗も同様に生育に障害が現れます。
こうした原因で生育が止まってしまった苗そのままにしておくと翌年の収穫に影響しますし、病気の発生源になったりもしますので、早めに抜き取って代わりの元気な苗に植え替えておきます。これを補植(ほしょく)といいます。
補植の際には、10月中旬に行った定植の時と同じように、植えつける苗の向きに注意して、植え付け後は十分に水を与えておきます。(10月のイチゴ苗の植え付け方法については、当サイトの「10月のイチゴ栽培・イチゴ苗の植え付けのコツとポイント」のページをご覧ください)
また、補植作業は、通常の植え付けの場合と同じように、イチゴ苗の根が土に馴染んで活着が順調に進むように午前から昼間の暖かい時間帯に行い、植え終わったら、苗の根が土に馴染むように充分に水を与えます。
活着後は、11月中旬頃を目安に、少しずつ水やりを控えめにして休眠の準備に入ります。ただし、休眠に入っても土を乾燥させると株が枯死してしまいますので土を乾燥させすぎないように注意が必要です。
11月に入ったら12月上旬くらいまでを目安に、秋に定植したイチゴ苗に、1回目の追肥(ついひ)を行います。この時点での追肥は、イチゴ苗に充分に根を張らせ、越冬に備えるための大切な作業ですので、必ず行っておきましょう。
鉢植えやプランター(コンテナ)栽培では、露地栽培に比べて土の量が制限されるため、とくに注意が必要です。その後、イチゴの株の生育を見ながら、2月上旬にマルチングを行うまで、1回〜2回追肥を行います。
マルチングは、土の水分の蒸発の防止、地温の保持、水はねなどによる病気感染の防止などの目的で、、ワラ(藁)やポリフィルムなどを使ってイチゴなどの作物の株元を覆うことをいい、とくに畝やプランター(コンテナ)、鉢などで栽培するイチゴの露地栽培では欠かせない作業です。
露地栽培(イチゴ畑)の場合の1回目の追肥は、11月下旬から12月上旬を目安に、「N:P:K=12:8:12」のような配合比の緩効性化成肥料を1㎡あたり30g,有機配合肥料の場合は、配合比「N:P:K=6:5:5」を目安に、1㎡あたり60g程度施します。
緩効性肥料(かんこうせいひりょう)は、与えた時から緩やかに効果が現れ始め、1〜2ヶ月ほど効果が持続する肥料をいいます。施してから徐々に効果が現れる特性のため、与えた植物に肥料焼けの弊害が出にくいという特徴があります。
化成肥料は、肥料の三要素である「チッソ(N)」、「リン酸(P)」、「カリ(K)」のうち2種類以上を化学的に結合させた肥料のことをいいます。化成肥料は、用途に合わせて成分バランスが調整されていて、それぞれの成分の配合比(%)が肥料のパッケージに「N:P:K=6:5:5」のように表記されていますので確認しておきましょう。
鉢植えやプランター(コンテナ)栽培では、土10リットルあたり緩効性化成肥料(N:P:K=12:8:12)を3〜4g程度を目安に施します。
イチゴは肥料焼けしやすいので、露地栽培、鉢植え、プランター(コンテナ)栽培ににかかわらず、イチゴの株元から少し離して肥料を施しておきましょう。
追肥には、市販されているイチゴ専用の肥料のなかから選んで施してもかまいません。その場合には、それぞれの肥料のパッケージにある取り扱い説明をよく読んで、用法や用量を守ってお使いください。
定植したイチゴ苗から出る枯れた葉を、こまめに摘み取ったり取り除いたりすることも11月の大切な作業のひとつです。
すでにご紹介したように、10月に定植したイチゴ苗が土に根づくと、気温がまだ生長に適した温度帯にある間は脇芽や葉が出て、次第に葉数も増えてきます。場合によっては蕾が出てきたりすることもあります。
やがて11月の中旬を過ぎる頃になり、寒さが強まってくると展開した葉が地面に伏せ、ちょうど冬を越すタンポポのようなロゼットと呼ばれるような姿になります。
その後、霜が降りる頃になると、中心の2〜3枚の葉を残して、それ以外の葉が枯れ始めるので、完全に枯れた葉をその都度摘みとっていきましょう。ただし、多少枯れていてもまだ緑の残る葉は完全に枯れてしまうまで摘み取らずに残しておきます。
こうした枯れ葉の摘み取り作業は、できるだけ晴れた日の午前中から午後にかけて行います。枯れ葉を放置するとうどんこ病などの病気の原因にもなりますので、見つけたら時期に関係なく取り除いておきましょう。
10月中旬頃にイチゴ苗を定植をしてからの1週間くらいは、とくに充分に水やりをして、イチゴ苗の根が土に活着するのを促すように心がけておきます。
露地栽培(いちご畑)での栽培では、畝全体が乾かないように全体に水をまいて土に充分水を含ませ、11月中旬頃の地温が低下し寒さが厳しくなる頃までにしっかりと根を張らせることが大切です。その後、11月中旬頃を目安に徐々に水やりを控えます。
植木鉢やプランター(コンテナ)栽培では、土の量が制限されるため露地栽培に比べて、土が乾燥しやすくなっていますので、土の状態をこまめに観察して土が乾き始めたらたっぷりと水を与えます。
そして11月中旬に入ったら天気や苗の生育を見ながら、徐々に水やりを控えます。
ただし、露地栽培、鉢植え、プランター(コンテナ)栽培のいずれの場合でも、土が乾燥し過ぎるとイチゴの株の耐寒性が下がって、葉が枯れてしまったり、春からの生育が悪くなるなどの影響が出ますので、土を完全に乾燥させないよう注意が必要です。
イチゴ苗が休眠に入る前に、うどんこ病、炭疽(たんそ)病、灰色かび病の予防を兼ねた対策をしておきましょう。
露地栽培(イチゴ畑)での予防には、希釈して薬剤散布するオーソサイド水和剤80、ポリオキシンAL水和剤、サンヨールなどの薬剤が効果的です。
薬剤散布前の希釈作業の際には、くれぐれもそれぞれの薬剤の取扱説明書に従い、用量、用法を守ってお使いください。
また、アブラムシ、ハダニなどの予防にも、希釈して薬剤散布するマラソン乳剤、アーデント水和剤などが効果的です.
ちなみに、家庭菜園でのイチゴ栽培は、大規模な商業的栽培と違って、果実の粒揃いや大きさ、大量の収穫をそれほど気になくてもいいことから、できるだけ薬品を使わずに無農薬で育てたいという方もいらっしゃると思います。
規模の小さないちご畑やプランター(コンテナ)、植木鉢を使ったイチゴ栽培では、多少の手間がかかることを除けば、無農薬で育てることもそれほど難しいことではありません。
多少手間がかかっても無農薬でということであれば、病気にかかった葉や蕾や果実をこまめに取り除いたり、防虫ネットなどで害虫を追い払ったりすることでじゅうぶん無農薬で育てることも可能ですので、一度検討してみるのも楽しいかもしれません。
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