このページでは、イチゴの株を冬の間休眠させ一定期間5℃以下の低温に当てる休眠打破のあと、春に開花させて果実を収穫する作型(露地栽培)に沿った「12月のイチゴ栽培・防寒と追肥・作業のコツとポイント」を紹介しています。
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イチゴは、自然の条件下での栽培(露地栽培)では、秋の短日条件・低温条件下での花芽分化のあと、さらに気温が下がると新しく出てくる葉が次第に小さくなり、やがてロゼットと呼ばれる姿で休眠期に入ります。
一般的には11月頃にもっとも休眠が深くなり12月も休眠状態が続きます。
イチゴは寒い冬の間タンポポのようにロゼットと呼ばれる矮化した姿で休眠して冬を越します。
植物の種類によっては、一旦休眠に入っても、気温が上がると休眠から目覚めるものもありますが、イチゴは休眠状態に入ると、暖かい場所に移しただけでは生育を再開したりランナーを出したりしません。
その理由は、もしも冬の間に、天候の変化によってたまたま暖かい日が数日続いた時、それを春が来たと感じて茎や葉を展開してしまうと、再び寒さが戻った時「寒害」によって枯れてしまうからです。
そこでイチゴは、一時的な気温の上昇に惑わされることなく冬の期間を間違いなく休眠して越えるために、一定期間5℃以下の低温に当たらなければ休眠から覚めない仕組みを身に着けているのです。
こうした、休眠中に生育に適した気温になっても、一定期間低温に当てないと休眠から目覚めない休眠状態を「自発休眠」といい、一定期間低温(5℃以下)に当てて休眠から目覚めさせることを「休眠打破(きゅうみんだは)」といいます。
一般的に自然休眠の休眠打破に必要な低温要求量は「5℃以下の環境での積算時間」で表されます。そして5℃以下の低温にどのくらいの時間当たれば休眠から目覚めるかは、イチゴの品種によって違いがあります。
ハウス栽培に多く用いられる「とちおとめ」「とよのか」「章姫(あきひめ)」「さちのか」などの休眠の浅い品種ではおよそ100〜200時間、休眠の深い品種では1000時間を超える品種もあります。
基本的には冬の期間が短い暖かい地域で作出された品種は低温に当てる時間が短く、冬の期間が長い北国で作出された品種は、低温に当てる時間が長くなる傾向があります。
イチゴは、ロゼットの状態で休眠している間でも、数枚残った矮化した葉で光合成を行っています。そして光合成によって作られた栄養分(糖やデンプンなど)は根に蓄えられ、再び春が来て生長するために使われます。
つまり、イチゴは冬の間しっかり休眠させることで根に養分がたくさん蓄えられ、充実した果実が実る丈夫な株になるのです。
逆に言えば、畑やプランター(コンテナ)、鉢での自然条件の栽培(露地栽培)では、土が凍結したり強い霜が降りるような寒冷地でも無い限り、寒くなったからといってあまり早い段階で防寒や保温することはイチゴの根の充実を妨げることになり、春からの開花結実、収穫にも影響が出るので注意が必要です。
ちなみに、クリスマスが近づく頃になると出回るイチゴの果実は、休眠させずにビニールハウスなどの保温された環境で夜間照明をして収穫された促成栽培という作型のイチゴです。
では、12月のイチゴ栽培の主な作業についてご紹介しますので参考にしてみてください。
イチゴは寒さには比較的強い性質があり、0℃以下の環境でなければ自然状態のままでも冬を越すことができます。
ビニールハウスや温室で保温しながら夜間の電照で冬から収穫を目指す促成栽培の作型を除けば、基本的に露地栽培(畑、プランター、コンテナ、鉢植え)での保温は必要ありません。
ただし、0℃以下の低温が長く続き地面が凍結するような寒冷地や、強い霜の降りる地域では、イチゴ株が凍結して枯れてしまわない程度の防寒対策が必要になります。
防寒対策の方法にはいくつかありますが、そのひとつに、短く切った藁(わら)で畑やプランター(コンテナ)、鉢のイチゴ株の周囲の土を覆うという方法があります。こうすることで地温が下がり過ぎないようにし、地面の凍結とイチゴ株の凍結枯死を防止します。
またプランター(コンテナ)、鉢は自由に移動することができるので、北風の当たる場所や冷え込みの強い場所を避け、ベランダの壁際や南側の軒先などの比較的暖かい場所に移動することでも防寒対策になります。
ただし、イチゴは5℃以下の低温に一定期間当てないと休眠から覚めず、春になっても活発に生育しなくなる性質があるので、あまり早い段階から防寒対策を行ったり、温室などで保温し過ぎると、春になってからの生育に影響が出ることもあるので注意が必要です。
秋のイチゴ苗の植え付け(定植)の直後から数週間は、苗の根が土に馴染んで活着するように、こまめに水やりをする必要がありますが、11月中旬から12以降は、徐々に水やりを控えていきます。
基本的には、畑やプランター(コンテナ)、鉢の土が乾燥してしまわないように、土の状態を見て適宜水やりをします。ただし、土に水を与えると地温が下がってしまうので、水やりは比較的暖かい日中の時間帯を選んで行うほうが安心です。
また、水やりの際には、与える水の水温にも気をつけておきましょう。水温が低いと地温を下げてしまうばかりでなく、イチゴの株に水がかかると株の凍結枯死のおそれもありますので注意が必要です。イチゴ株の生育を見ながら、2月上旬に行うマルチングまでに1〜2回程度を目安に追肥を行います。(定植後、11月中旬以降に1回めの追肥を行っている場合は12月の追肥は必要ありません)
マルチングは、土の水分の蒸発の防止、地温の保持、水はねなどによる病気感染の防止などの目的で、、ワラ(藁)やポリフィルムなどを使ってイチゴなどの作物の株元を覆うことをいい、とくに畑やプランター(コンテナ)、鉢などによる露地栽培では欠かせない作業です。
イチゴ株への1回目の追肥は、11月下旬から12月上旬にかけて行います、(すでに11月下旬に1回目の追肥を行っている場合は、今回の追肥は必要ありません)
畑で栽培している場合は、緩効性肥料(N:P:K=12:8:12など)を1平方メートルあたり約30g、もしくは有機配合肥料(N:P:K=6:5:5など)を1平方メートルあたり約60gを目安に施します。
プランター(コンテナ)、鉢植えの場合は、緩効性肥料(同じくN:P:K=12:8:12など)を用土10リットルあたり3〜4g、もしくは有機配合肥料(N:P:K=6:5:5など)を、1株あたり約2gを目安に施します。
緩効性肥料(かんこうせいひりょう)は、与えた時から緩やかに効果が現れ始め、1〜2ヶ月ほど効果が持続する肥料をいいます。施してから徐々に効果が現れる特性のため、与えた植物に肥料焼けの弊害がでにくいという特徴があります。
化成肥料は、肥料の三要素である「チッソ(N)」、「リン酸(P)」、「カリ(K)」のうち2種類以上を化学的に結合させた肥料のことをいいます。化成肥料は、用途に合わせて成分バランスが調整されていて、それぞれの成分の配合比(%)が肥料のパッケージに「N:P:K=6:5:5」のように表記されています。
追肥には、市販されているイチゴ専用の肥料のなかから選んで施してもかまいません。その場合には、それぞれの肥料のパッケージにある取り扱い説明をよく読んで、用法や用量を守ってお使いください。
またイチゴの株に肥料を施すときは、肥料焼けを防ぐために肥料が直接株に接触しないように少し離れたところに施すように注意してください。
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