このページでは、イチゴ栽培に欠かせない基本的な予備知識、「一季なり(性)イチゴの性質と特徴」についてご紹介しています。
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イチゴには様々な品種が数多くありますが、そうした栽培用として育てられているイチゴはすべてバラ科フラガリア属に分類される仲間で、自然の条件下で栽培されているイチゴには、年に1回、5月〜6月に果実をつける「一季なり(性)イチゴ」 と四季を通じて果実をつける「四季なり(性)イチゴ」とがあります。
大まかにいえば、促成栽培によってクリスマス前の冬の頃に出回るものと、夏前にかけて出回っているイチゴが一季なり(性)イチゴと考えてもいいでしょう。
品種でいうと、静岡県原産の章姫(あきひめ)、紅ほっぺ、栃木県原産のとちおとめ、女峰、福岡県原産のとよのか、兵庫県原産の宝交早生(ほうこうわせ)などが一季なり(性)イチゴの代表的品種です。
一季なり(性)品種と四季なり(性)品種のイチゴは、どちらも多年生の植物で、生育に適した環境であれば何年も生育することができます。ただし、一季なり(性)イチゴと四季なり(性)イチゴとでは、花芽(かが)分化(花芽形成)のしかたや開花・結実の条件が違います。
花芽形成についていえば、一季なり(性)イチゴの品種は、秋に日が短くなり、涼しくなっていくと花芽を形成する(花芽分化期に入る)性質があります。
一季なり(性)イチゴ品種は、低温・短日になると花芽(かが)を形成し、休眠後、高温・長日になると開花・結実するイチゴと思っていただければいいでしょう。
もう少し具体的にいうと、一季なり(性)品種は、9月頃の気温と日差しの長さ(日長)を感じ取って花芽分化が始まります。
気温で言うとおよそ12℃〜26℃くらい、日差しの長さでいうと、10〜13時間の日長の範囲で花芽分化が始まります。そして、自然の条件下では、その後休眠に入って冬を越し、春先にのみ開花・結実します。
ただし、休眠前の10月頃にハウスなどで保温して 育てる促成栽培を行うと、12月頃から収穫することができます。こうして栽培されたイチゴがクリスマス前に店頭に並ぶ一季なり(性)イチゴたちです。
果実ではなく、イチゴ苗という視点から見た場合は、およそ9月中旬〜下旬頃に秋植え用のイチゴ苗として一季なり(性)イチゴの品種が店頭に並ぶようになります。この時期に苗として出回るイチゴのほとんどは、越冬して春に開花・結実して収穫する一季なり(性)品種です。
ちなみに、同じ一季なり(性)イチゴの苗でも、春に出回るものもあります。こうした春先の一季なり(性)イチゴの苗のほとんどは、果実を作って収穫するためというよりは、ランナー(匍匐枝)を育てて増やすという使い方が一般的です。
この春先に出回る一季なり(性)イチゴ苗を普通に育てて果実を収穫することもできますが、どちらかといえば、秋に植え付ける苗を増やす目的で購入するということですね。
さきほども少し触れましたが、今ではイチゴの促成栽培が普及して、本来は春に収穫期を迎える一季なり(性)品種のイチゴの多くが、12月〜5月ころの期間に店頭に並ぶようになりました。
とくにケーキの販売量の増加と共に、イチゴの消費も伸びはじめる12月のクリスマス前からよく見かけます。もしかしたら、イチゴは冬の果物と思っている方も多いかもしれませんね。
でも、自然環境下で育てたイチゴの旬は本来5〜6月の春。ところが、実際には12月〜1月の冬の時季がいちばんのピークです。そのもっともも大きな理由は、促成栽培で冬に収穫されたイチゴが、本来の旬の時季に収穫されたイチゴよりも単純においしいからなのです。
では、なぜおいしいのか? その理由は、冬の低温環境にあります。
1〜2月に収穫した果実は、12月の低温下で生育しているため、開花から収穫までの期間がほぼ60日間と長くなります。つまりイチゴの果実の成熟期間が長いことにより、より糖度が高い、甘くておいしいイチゴができるのです。
こうした背景もあって、現在流通している生食用のイチゴのほとんどは一季なり(性)というわけです。
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